不器用な「推し」ゴト - あるメイド喫茶の閉店に寄せて -

※模型製作記を書くとか言って始めておきながら完全放置なこのブログ。ヲタブログとしてボチボチ活用していきたいと思います。
ちなみに、志半ばで製作記を放り出したネオ・グランゾンは無事完成して予定通り八展2018のスパロボコンペに出展し、見事受賞することができました。

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ネオ・グランゾン

さておき、

ここ数年、グランヴァニアというメイド喫茶に通っていました。

初めて訪れたのは多分5年前くらい。

「通っている」と言えるような頻度になったのは、せいぜいここ2年位でしょうか。

生まれつきのオタクである自分、メイド喫茶に行ったことがなかったわけではないのですが、「通う」と言えるような頻度で行っていたメイド喫茶はグランヴァニア以前にはありませんでした。

どのメイド喫茶もせいぜい1~2回行ったことがある程度。

そんな中、気になっていたグランヴァニアに初めて足を踏み入れて、なんとなく居心地の良さを感じました。

メイド喫茶にありがちなロールプレイを押し付けてくるでもなく。
かと言って完全にほっとかれるわけでもなく。
そしてメイドさんたちは皆ヲタ教養高め。
ついでに一般教養も高め。

ほど良い距離感の接客が本当に心地よく、「ホスピタリティの怪物だ!」と思ったものです。

また、提供される料理がクオリティ高かった。
「美味しいランチが食べたい」という理由だけでも行く価値のある「レストラン」でした。

 

そんな居心地の良い空間でしたので、当初は「アキバに来たときには寄る」という感じで、ひと月~数ヶ月に1度、多いときは月に数度という頻度で訪れていました。

そんな状態が1,2年続いた頃、ふと気付きます。

「自分は、この子に会いに来ているのでは?」

グランヴァニアに通う理由であるところの、「ほど良い距離感の接客」を最も体現していると感じた一人のメイドさんの事を意識し始めました。
仮にS.Rさんとしましょう。

自分は特にアイドルにハマったりとかはなかったし、メイド喫茶に「通う」のも初めてなので、「推す」という活動は未経験の状態でしたが、そんな事を意識しながら引き続き通ううちに完全に「これが推すという気持ちか!」と納得したものです。

グランヴァニアは、「アキバに来たら寄る場所」から、「アキバに来る目的」に変わっていきました。

で、いざ「推し」というものが自分の中に誕生したものの、世に言うところのオシカツがどういったものなのか検討も付きませんでした。
また、単純に照れと恥ずかしさから、溜まったポイントカードの権利を行使してチェキをお願いすることもできず、推しが誕生してもそれまでと変わらずに単に空間と食事を楽しむだけの状態でしばらく通い続けます。

そんな状態で通う中、ホスピタリティの怪物であるグランヴァニアのメイドさん達の中で、S.Rさん以外にも自分のことを常連客のように認識して接客してくれるメイドさんが現れました。
仮にS.Yさんとしましょう。

「流石、ホスピタリティの怪物だ。有り難いことだ。」

と思いながらも、「でも、最初にグランヴァニアの居心地良さを自分に提供してくれた、自分の推しはS.Rさんだから」と、特にS.Rさんに対して何らかのオシカツをしていたわけでもないのに、意味不明な頑固さを発揮して対外的には何ら変化の無い自己完結をしたりしていました。

その後、意を決してS.Rさんとのチェキを撮ることに成功。
やっと自分にもオシカツができた~と嬉しかったのを覚えています。

忘れもしないその日、S.Yさんがこう話しかけてくれました。

「チェキ、珍しいですね」

初めてチェキを撮ったわけですから当然ですね。
ですが、そんな事はどうでもいい。
この言葉は自分にとってちょっと大きかった。
この言葉を掛けるためには、常連としてよく来る客であると認識しており、かつ今までチェキを撮ったことが無い事を把握している事が必要です。

接客業としては割と普通のことなのかもしれません。
自分も昔居酒屋でバイトしていた頃は常連の顔を覚えてある程度の対応はしていたでしょう。

が、そんな普通の接客でも、メイドさんがやるとメイド喫茶に通うヲタクは殺せるという事です。
単純に、嬉しかった。

「本当にグランヴァニアはホスピタリティの怪物の巣窟だ。大好きだ!」と再認識しました。

その直後にグランヴァニアでとあるイベントが開催されました。
一歩踏み出せれば、二歩目めは簡単です。
イベントのコスプレ姿のチェキをS.Rさんにお願いしました。

そして、、、

イベントだからいいか!と、とても再現度の高いハイクオリティなコスプレをしていたS.Yさんともチェキを撮りました。

今考えれば、なぜイベントじゃなかったら駄目なのか本当に意味不明ですが。。。

 

その後、人生初のオシカツの火蓋を切った自分の「推す」気持ちはグングンと上がっていき、それに従ってグランヴァニアに通う頻度は上がっていったように思います。
そして、「自分にとってのオシはS.Rさんであることには変わりない!八方美人は良くない!」と、本当に意味不明な頑固さを発揮し、「チェキを撮るのはS.Rさんだけ!イベントだろうが何だろうが、もう二度と浮気はしない!」とガンガンこじれていきました。

S.Rさんがいつも店内で話しているソシャゲを知り、共通の話題欲しさのあまりそれを始めたりもしました。

 で、オシカツという事を色々と考えてみたものの、どうしても特定のメイドさんに個人的にプレゼントを渡したりする行為に抵抗があり、仕事絡みでドサっと頂いた商品サンプルを「皆でわけて」と渡したりする程度にとどめていました。

そんなコジレヲタクですが、ホスピタリティの怪物であるグランヴァニアのメイドさん達は相変わらずホスピタリティの怪物として程よい距離感の居心地の良い接客を当然の如く提供してくれます。

 

この空間、永遠にここにあるんだろうな。
でも、いつかS.RさんもS.Yさんも卒業しちゃうのかな。
寂しいな。

 

なんて思っていたら、御存知の通り突然の閉店が発表されます。
いつか、推しのメイドさんの卒業を見送るのかと戦々恐々としていたら、自分が店から卒業しなくてはいけなくなってしまいました。

正直、ここ1~2ヶ月は営業が縮小されたり等、すこし不安な兆候があったことは事実で、まったくの予想外と言えば嘘になります。
でもなんとかこの難局を乗り切って欲しい。
そのためにもなるべく通おう。

と思っていたのですが、タイム・アップとなってしまいました。

そして、閉店が発表されてから最終日までの自分は、、、精神的に平常ではなかったと思います。

居心地の良い空間だったグランヴァニアがなくなってしまうのが悲しい。
S.Rさんに会えなくなってしまう事が悲しい。
最後に、感謝の気持ちを形にしたい。
でも個人的に何かあげたりするのはちょっと、、、
でも、形にしなきゃ意味が無い。

とかなり苦悩した末、やはり形にしようと決意して、通常営業のなかで一番最後に行ける日に形として感謝を伝えました。
その時は、割とスッキリしたものです。

 

その後、通常営業ラストの後に閉店イベントのようなものが開催されるという事で、それにはガッツリと参加したのですが、

そこで他の常連客の方々と初めて沢山お話をする機会がありまして、色々な話をして、他の常連客の方のオシカツも聞いたりして、家に帰ったらば、

自分のこのコジレ具合は何だ?

と、憑き物が落ちたような気持ちになったのです。
他の常連客の方々は実にスマートに、拘り過ぎずにグランヴァニアでの時間を楽しんでいたのに比べて、自分の変な拘りようはなんだったんだ。

というか、閉店発表後に思いつめて周りが見えなくなっていた自分に気付き、我に返ったという方が正しいか。

そして、この上ない後悔に襲われました。

俺、S.Yさんにちゃんとお礼してない。。。

所詮は客ですから、別にお礼とかしなくてもいいのかもしれません。いや、きっと必要なんてないんでしょう。
でも、S.Rさんに個別にお礼をして、S.Yさんにしていないのはやっぱおかしい。コジレてるだけだ。
S.YさんもS.Rさんと同じくらい、居心地のいい空間・時間を提供してくれていました。間違いなく。
冷静になった今、曇りなきマナコで客観的に見れば、自分にとってのグランヴァニアは間違いなく、S.RさんとS.Yさんが待っていてくれる場所だった。

「推し」がS.Rさんなのは間違いありません。
でも、その「推し」の気持ちも、元を辿れば「感謝」です。
「居心地のいい空間を有難う!そんな時間を提供してくれるアナタが大好きだ!」という気持ちです。
S.RさんとS.Yさんとの間に、どれほどの違いがあるのか。
(S.Rさんのほうがヲタ教養が高そうな感じがするので、その辺が違いだったりするのかな、なんて客観的に分析したりもするのですが)そんな事はどうでもいい!

人生の中で一時飲み食いの道楽にハマっていて、その時に「接客に対するねぎらいは礼儀だ」なんて偉そうに言っていたのを今更ながらに思い出します。

人生初の「推し」という気持ちに浮かれ、閉店という大事件にブンブンと振り回されて周りが見えなくなり、昔自分が偉そうに語っていた事も満足にできなくなっていた。

 

こんな事を、本当の本当に最後の瞬間の後に気付くなんて、なんと不器用なのか。

いつかこの後悔を払拭できる日が来ることを祈りながら、気持ちが生まれてからはせいぜい2年、初めて「チェキお願いします」と言えた日、客観的なオシカツを始めてからはなんと1年足らずの、自分に「推し」がいた日々へのピリオドを打ちたいと思います。

もう、オシカツをする事も無いのかな。

有難う、グランヴァニア

有難う、S.Rさん、S.Yさん。